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≪オンラインイベントレポート≫『プロ野球 師弟関係の系譜論』第1回

≪オンラインイベントレポート≫『プロ野球 師弟関係の系譜論』第1回

◎プロ野球界の技術の伝承を解き明かす濃厚オンラインセミナー

 2021年5月9日、野球太郎本誌やNHK-BS『球辞苑』でもおなじみの野球ライター、炎のストップウオッチャーことキビタキビオ氏によるオンラインセミナーが開催されました。

 テーマは「師弟関係」。プロ野球界における“技術”の伝承はどこから始まったのか? 現代まで脈々と続く系譜は?

 一見、難しそうに見えるテーマですが、この調査をライフワークに掲げるキビタキビオ氏がわかりやすく解説していきました。

◎開祖は誰だ!?

 戦前、プロ野球が「職業野球」と呼ばれていた時代から師弟関係は存在したはず。しかし、技術的指南というよりも「体力的・精神的修行」が報道では重視されました。

 師弟関係がフィーチャーされ始めたのは1950年代。中日・杉下茂が天知俊一監督からフォークの握りを教わり、「フォークの神様」として活躍。引退後もフォークボールを伝道していきました。

 1960年代に入ると打者の師弟関係も明らかになっていきます。最も有名なのは東映・飯島滋弥打撃コーチが大杉勝男に言った「月に向かって打て」。

 この月が空のどこに浮かんでいたのかは諸説あるものの、打球角度の意識という意味では、現代の「フライボール革命」と遠くない指導だったのではないかとキビタ氏。

 また、阪急・長池徳士は法政大時代、アベレージタイプの巧打者でしたが、青田昇コーチの指導によって長距離打者として開花。

「自分の鼻をバットで削ぎ落とすように内角を打ちなさい」という指導で内角打ちを磨き、「ミスター・ブレーブス」と呼ばれるまでの大打者になりました。

◎昭和の打撃コーチ御三家

 キビタ氏が「昭和の打撃コーチ御三家」と位置づけるのが、王貞治に一本足打法を授けた荒川博コーチ、選手の個性を生かした自在派の中西太コーチ、熱心な指導で多数の球団を渡り歩いた山内一弘コーチの三氏。

 次回以降のセミナーではこの三氏を中心に繋がる「系譜図」の作成に着手する予定です。

☆中西太→杉村繁→山田哲人
☆中西太→新井宏昌→丸佳浩

 など、現代まで続く“技術”の伝承を解説予定とのこと。

 神宮のバッティングセンターで小学生を指導していた荒川コーチの言葉、台湾球界時代の山内コーチの指導法など、こぼれ話も満載でした。

◎投手はセンシティブな生き物

 野手に比べて、投手はメカニックの部分や感覚を重視する人種。キビタ氏のこれまでの取材経験、文献調査では、

・新球種を教えてもらったコーチ
・調整法を投手自身に任せてくれたコーチ
・変化のきっかけを与えてくれたコーチ

 を「師」と語る選手が多いそうです。

 伝承の例として挙げられたのが、巨人・藤田元司監督。投手コーチ時代には、高橋一三にスクリュー習得を勧め、V9時代のエースとして開花。のちに監督になってからも斎藤雅樹をサイドスローに転向させるなど、ブレイクのきっかけを作る名人でした。

 投手の技術伝承は打者の師弟関係に比べるとクローズアップされにくい話題ですが、選手に慕われる投手コーチの法則など、今後も調査は続きます。

 セミナーの後半では受講者参加型の質問コーナーも。

「OBがうるさい球団とそうでない球団の違い」
「現役選手は本当の師匠を明かさない!?」

 など、ここでは書けないようなマル秘話も次々と飛び出しました。次回のオンラインセミナーは、6月12日(土)に開催となる予定です。【投手の師弟関係】を掘り下げます。

 プロ野球マニア必見の日本一濃い「プロ野球史セミナー」。ぜひ、ご参加ください!

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