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《『野球太郎』バックナンバーで答え合わせ》2012年・小川泰弘(ヤクルト)の未来予想は半分的中!?

《『野球太郎』バックナンバーで答え合わせ》2012年・小川泰弘(ヤクルト)の未来予想は半分的中!?

 現在、球界で注目されている選手のドラフト時における評価はどうだったのか。

 本誌『野球太郎』では、毎年、ドラフト会議の前後に発行する「ドラフト直前大特集号」、「ドラフト総決算号」で、その年のドラフト候補を徹底分析している。

 この度、週刊野球太郎では、現在の活躍中の若手選手をピックアップし、過去の本誌で掲載したドラフト候補時の評価・未来予想と照らし合わせながら、答え合わせを行っていく。果たして『野球太郎』の見立ては合っていたのか?

 第4回で取り上げるのは2012年のドラフト2位・小川泰弘(創価大→ヤクルト)だ。

◎新人王獲得に3年連続開幕投手と順調に見えたが……

 大卒即戦力投手として期待された小川はルーキーイヤーの2013年、開幕5戦目に初先発。7回途中自責点0の好投で初勝利を挙げた。以降も順調に白星を積み重ね、1年目は16勝4敗、防御率2.93の成績で最多勝、最高勝率、新人王を獲得。一躍、エース候補にのし上がる。

 また、ノーラン・ライアン(元アストロズほか)に似た、足を高く上げる特徴的なフォームから「和製ライアン」と呼ばれ、人気選手となった。

 2年目の2014年も開幕投手に抜擢されると、離脱がありながらも9勝をマーク。「たられば」ではあるが、最終戦のエラーで勝ち星を逃さなければ、2年連続2ケタ勝利となるはずだった。

 2015年の勝ち星は11勝。順調にキャリアを積み重ね、昨シーズンは3年連続開幕投手を務めるなど、名実ともに大エースへの道を歩んでいるように見えた。

 しかし、昨シーズンは序盤から失点をするケースが増えた。5月は勝ち星がなく、6月も月末に1勝を挙げたのみ。ここで小川は奮起し、8月には3連続完投勝利を含む4勝をマーク。月間MVPを受賞しCS進出に向けて臨戦態勢を整えたが、9月からシーズン終了までまさかの4連敗……。

 8勝9敗と自身初の負け越しを喫し、防御率4.50は規定投球回到達者のなかでワーストの成績だった。

 エースとして順調に階段を登っていたはずだったが、ここにきて思わぬ足踏みを強いられている。

【2013年シーズン成績】
26試合:16勝4敗/投球回178/奪三振135/与四球45/防御率2.93
【2014年シーズン成績】
17試合:9勝6敗/投球回108.1/奪三振108/与四球22/防御率3.66
【2015年シーズン成績】
27試合:11勝8敗/投球回168/奪三振128/与四球48/防御率3.11
【2016年シーズン成績】
25試合:8勝9敗/投球回158/奪三振114/与四球52/防御率4.50

◎【『野球太郎』のドラフト前の評価】負けじ魂を評価

 『野球太郎』本誌のドラフト特集による小川の評価を振り返ってみよう。

 創刊号にあたる『野球太郎No.001 2012ドラフト直前大特集号』を取り出してみる。こちらはドラフト前に発売されているので、ヤクルトが指名する前の段階のものだ。小川は152名が掲載されている「ドラフト候補名鑑」のなかで「大学生注目選手」に名を連ねている。

 大きなスペースで紹介されている大学生選手は、東浜巨(亜細亜大→ソフトバンク1位)、菅野智之(東海大卒→巨人1位)、伏見寅威(東海大→オリックス3位)。小川の注目度は、彼らよりもやや下回っていたことがわかる。

 ここでの評に目を向けると、「学生球界の“小さな大投手”」の書き出しで始まり「無類の負けじ魂、追い込んだ練習を続ける精神性」と続く。

 負けず嫌いで、常に追い込んだ練習を続ける小川の精神性を評価していた。筆者はこの大学時代の評価は報道でしか知らないのだが、当たっているだろう。プロに入ってからも、課題のひとつだったクイックの練習に取り組む真剣な姿には、ファンの胸を打つものがあったからだ。

 また、「12球団別・ドラフトの焦点はここだ!」という特集でのヤクルトのページを見ると、真っ先に補強ポイントとして「故障のない頑丈な投手を」との見出しが打たれている。

 そして文中では「巷間で言われている1位指名は亜細亜大・東浜巨だが、彼は右ヒジに故障を持っている。となると、大阪桐蔭高・藤浪晋太郎でいったほうがいいと思う」と提言。実際、この年のドラフトでヤクルトは藤浪晋太郎を指名(※)。『野球太郎』の指名予想は間違っていなかった。
(※阪神、オリックス、ヤクルト、ロッテが藤浪を1位競合指名。結果、阪神が交渉権を獲得し、藤浪は阪神に入団した)

 なお、オススメの投手として「小川泰弘」の名は出てこなかった。

 余談になるが、ここでは「初回の出塁から即盗塁のスタートをきる快速捕手」ということで藤井亮太(シティライト岡山)を推している。藤井は翌2013年ドラフトでヤクルトに指名され入団。入団の1年前から藤井を推していた『野球太郎』の見立ては恐るべし……。

◎【『野球太郎』でのドラフト後の評価】即戦力推しもリリーフ適性と……

 続いてドラフト後に発売された『野球太郎No.002 2012ドラフト総決算プレミアム特集号』を見てみよう。

 各チームのドラフト結果を考察する特集「ドラフトで笑ったのはこのチームだ!」でのヤクルトのページには、このような見出しが大きく打たれている。

「小川泰弘(創価大)と江村将也(ワイテック)の両投手は、即戦力」

 文中でも小川を第一の即戦力候補に推し、「会心の指名選手!」というコーナーでは小川を取り上げている。事実、新人王を獲得することになるだけに、「さすが、野球太郎!」といきたいところだが、よく読んでみると「会心の指名選手!」では「現状の投手陣では、後ろの1イニングが適任だろうか」とある。え? リリーフですか……。

 フォローをすると「先発でも5~6回、試合を作るだけの能力はあるはずだ」と、原稿は締められている。チーム事情を見るとリリーフで起用したいが、先発でも大丈夫。これが、小川に対する『野球太郎』の見立てだったのだ。

 また余談になるが、「近未来チーム編成シミュレーション」というコーナーでは、2017年のヤクルトの投手陣が予測されている。先発は由規、赤川克典、八木亮祐の3名。中継ぎは小川、抑えは増渕竜義となっている。毎年、ケガ人が多いヤクルトだけに、5年後の予測はやはり難しい……。

 この号では、大学生投手のなかでは菅野智之、東浜巨と並んで、則本昂大(三重中京大→楽天2位)らも高評価されている。

 2012年のドラフトは大谷翔平(花巻東→日本ハム1位)、藤浪の高校生投手と、東浜の話題一色だった。3球団が競合した東浜は、ほかの注目ドラフト指名選手よりも開花は少し遅かったが、昨季は9勝をマーク。ようやくソフトバンクを支える投手に成長しつつある。

 ドラフト時の本当の評価は「5年はかかる」といったところだろうか。

文=勝田 聡(かつた・さとし)

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