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一大論争を巻き起こしたあの“魔球”の誕生秘話に迫る!

一大論争を巻き起こしたあの“魔球”の誕生秘話に迫る!

夏の甲子園大会が終わって約半月が過ぎた。大阪桐蔭高(大阪)の優勝で幕を閉じた今大会。健大高崎高(群馬)の「機動破壊」や、沖縄尚学高(沖縄)の山城大智のライアン投法など、数々の話題を提供してくれた大会でもあった。

しかし、最も大きな話題となったのは、東海大四高(南北海道)のエース・西嶋亮太が投じた、あの山なりのボールだろう。この投球についてSNS上では「高校生らしくない」「野球をなめている」という意見が噴出し、思わぬ騒動となった。

今回の騒動の一部始終をまとめ、先日12日に発売された『野球太郎No.011高校野球2014夏の思い出号』(発行・イマジニア株式会社ナックルボールスタジアム/発売・廣済堂出版)に掲載されている本人への直撃インタビューを元に、西嶋をクローズアップしてみた。

◎超スローボールではなく「スローカーブ」

事件はプロ野球専門番組のキャスターを務めた経験もある人物のつぶやきから始まった。甲子園で西嶋が投じた推定50キロの“超遅球”に対して、「スローボールは投球術ではない」といった旨の発言をTwitter上でつぶやき、それを人づてに聞いたダルビッシュ有(レンジャーズ)が「自分としては一番難しい球だと思っています」と持論を展開。三浦大輔(DeNA)や多田野数人、栗山英樹監督(ともに日本ハム)らが意見を述べ、一般の野球ファンも持論を展開するなど、思わぬ社会的反響を呼んだ。まさに時の人となった西嶋は、この件についてどう感じていたのか。

「最初はビックリしましたが、注目されることは正直嬉しかったです」と語る西嶋。決して話題になるためではなく、勝つために、自分がいい投球をするために編み出したボールであり、全体練習後、自主練習でネットに向かって1人で黙々と“超遅球”を投げ込んで完成したボールだったという。

また、西嶋はあのボールは超スローボールではなく「スローカーブ」だと説明。普通の山なりのボールよりも、ボールが落ちていくときに回転がかかっていた方がコントロールしやすいといい、僅かながらカーブ回転をかけて制球していることを明かしてくれた。ダルビッシュが語るように、超スローボールをコントロールするのは非常に難しい。そこには、こうしたハイレベルな技が隠されていたのだった。

◎西嶋亮太という投手

1996年4月10日生まれの西嶋は、北海道帯広市の出身。中学時代はとかち帯広シニアで二塁、遊撃を守りながら投手も兼任していた。東海大四高に進学後は1年春からベンチ入りし、2年秋にはエースに成長。今夏はチームを21年ぶりの甲子園に導いた。甲子園では初戦の九州国際大付高(福岡)戦で、優勝候補相手に堂々のピッチング。被安打5、12奪三振、1失点完投勝利をマークし、この試合ではあの山なりの「スローカーブ」を計4球投じた。

168センチ59キロと小柄ながら、135キロ前後のストレートとタテ・横に曲がるスライダー、さらに緩いカーブを緩急自在に操る技巧派右腕は、甲子園で抜群の制球力と高いフィールディング能力を披露した。野球センス溢れる西嶋は、さらにインタビューで「あんなに(騒動に)なって、ちょっと怖さを知ったというのもあります」と語っている。自身は野球のため、チームの勝利のために投じた「スローカーブ」が、思わぬ方面に波紋を起こした件に戸惑いつつも、今の時代、社会、世間の怖さを冷静に分析できる西嶋本人のクレバーさを感じさせるコメントだ。

◎「スローカーブ」のこれから

類い希な野球センスと、不断の努力で完成した「スローカーブ」。「世の中をなめた少年に」なるはずもないのだが、西嶋が大学、社会人で野球を続ける時に、やはり投げづらい雰囲気は出てくるだろう。今後、この「スローカーブ」はどうなるのか。

西嶋は「どんどん使っていこうと思っています」とキッパリと語ってくれた。「自分のスタイル」とも表現する「スローカーブ」は「大舞台になればなるほど威力を発揮する」とも話し、「西嶋亮太のスタイルを定着させて、できれば配球面や攻め方、考え方、そういうところを見習ってもらえるようなピッチャーになりたいです」と夢を語っている。

この夏、誰よりも個性という輝きを放った18歳の少年の野球人生は、まだまだ始まったばかりだ。

 

・2014年9月16日 gooニュース提供記事

http://news.goo.ne.jp/article/yakyutaro/sports/yakyutaro-20140916184945090.html
※イマジニア株式会社ナックルボールスタジアムが著作権その他の権利を有する記事コンテンツを、gooニュースで配信したものです。

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