プロ野球界の師弟関係を解き明かすオンラインセミナー「師弟関係の系譜論」。
第1回、第2回は本誌でもおなじみの野球ライター・キビタキビオ氏が昭和から現代に繋がる師弟関係を解説していきましたが、第3回はロッテ、中日で活躍した愛甲猛氏をゲストに迎え、濃厚なトークが展開されました。
◎落合博満氏との師弟関係
横浜高校時代はエースとして甲子園制覇を果たした愛甲氏ですが、プロ4年目の1984年に野手へ転向。ロッテに在籍していたレジェンド・落合博満氏に弟子入りし、師弟関係にあったことでも知られています。
「元々は僕に1番の背番号をくれた高橋博士さんが『お前、オチに頭下げて自主トレ連れて行ってもらえ』と言ってくれたのが始まりですね」(愛甲氏)
当時、落合氏の自主トレ場はゴルフ場。朝5時半起床で走り回り、昼間は自主トレという名のゴルフでしたが、重いゴルフバックを持って走り、心身ともに鍛えられたそうです。
「3年目にレオン・リーがトレードでいなくなって、ファーストがオチさんだけになったんです。それでシートノックが大変だから『愛甲、お前も手伝え』となって、いつの間にかファーストでノックも受けていたんです(笑)」(愛甲氏)
その頃から常々、落合氏は愛甲氏に「お前、ピッチャー辞めろ」と言っていたそうで、3年目のオフに愛甲氏は野手転向を決断します。
「ところが新しく監督になった稲尾(和久)さんが『誰だ! 愛甲にピッチャー辞めさせたのは!』と激怒。どうやら投手陣の構想に入っていたようですが、オチさんが『オレが責任を持ちます』という形で収めてくれたようです」(愛甲氏)
こうして、落合氏と愛甲氏の本格的な“打者”としての師弟関係がスタートしました。
◎照れ屋さんだった落合氏
「弟子なのか付き人なのか使い走りなのかよくわかりませんが、いつも一緒にいました。オチさんといえば、厳しいイメージがあるかもしれませんが、昼間に川崎球場でファームの試合があると観に来てくれる。いい二塁打を打っても『あれぐらいは当たり前だな』と言っていましたが、実は照れ屋さんなんです」(愛甲氏)
打撃指導については、1か所を意識するような型にハメた指導ではなかったそうです。
「全体のバランスを見た指導でしたね。最初に言われたのは『お前の足は割り箸みたいだ』。元々体は柔らかかったのですが、3年間、ピッチャーの練習ばかりやっていたので、打撃でうまく体を使えなくなっていたんです」(愛甲氏)
キャンプでも同じ部屋に引き入れ、夜間練習が終わったあと、夜の10時から夜中の1~2時まで付きっきりで指導してくれたとのこと。
「落合さんに言われてバットもめちゃくちゃ振りましたし、有藤(通世)さんに言われて毎試合、試合前にポール間を10往復を走った時期もありました。自分自身、すごいバッティングが良くてプロに入ったわけではないし、そこまでやったからこそプロでやっていけたと思いますね」(愛甲氏)
その他、落合夫妻との関係やプロ野球界の派閥論など、裏話も盛りだくさん! ぜひ次回の野球太郎オンラインセミナーへのご参加を!
▲落合氏は足から根っこが生えているかのように微動だにせず、ボウリング効果か右腕の強さが尋常じゃないそうです。落合氏の体はとても強いと愛甲氏が語っていました。