野球太郎Web|高校野球からプロ野球ドラフト情報まで

≪オンラインイベントレポート≫野球選手養成講座〈第4回〉上を目指す選手のための『実戦的野球データ活用術』

≪オンラインイベントレポート≫野球選手養成講座〈第4回〉上を目指す選手のための『実戦的野球データ活用術』

◎西谷尚徳氏と金沢慧氏によるコラボセミナー

 2021年5月22日、元プロ野球選手で大学の准教授を務める西谷尚徳氏によるオンラインセミナーが開催されました。

 今回はスポーツアナリストの金沢慧氏をゲストに迎え、上を目指す選手のための『実戦的野球データ活用術』をテーマにトークを展開。

 データの取り方などの基本的な部分から、プロ時代の実例、アナリストとしての考え方などを多角的に披露してくれました。

◎データの基本はスコアブックにあり

 近年はデータと言うと「セイバーメトリクス」を指すことが増えましたが、基本的な部分はスコアブックにあると西谷氏。

 現役時代を振り返って、対戦する投手の「球種と投げる割合」、守備に関しては相手打者の「打球傾向」などを例に挙げました。

 アナリストの金沢氏も自身の野球経験を交えて解説。一般的にデータは分母が多いほうがいいとされますが、野球においては多すぎると迷いにもつながるそう。

「いかに自分のパフォーマンスに落とし込むことかが大事なので取捨選択が重要」と、データの扱い方を語ってくれました。

◎7割の失敗を通したデータのパターン化

 また、西谷氏はプロ生活で感じたこととして、「調子がいい時にできたこと」「調子が悪い時にできなかった」ことを拾い上げてパターン化することも大事と力説。

 特に打撃は3割で成功の世界なので、成功体験よりも失敗体験から得るものが多いそう。それを調べるのもスコアブックが役に立つそうです。

 そもそも、自分の欠点が改善できない、壁にぶち当たってしまった時、それらを克服するためにどうしたらいいか? を考える上で、データに触れるのがプロ野球選手。目的を明確にしてデータを見る、集めるようにしましょう。

 そんななかで西谷氏は、発足当初の楽天に入団したこともよかったと振り返りました。というのも当時の楽天は徹底したデータ解析を始めた球団で、あらゆるデータを持っていたということでした。

 これには金沢氏も「新しいチームでまっさらな状態だったので、分析のスペシャリストを集めることができた」と補足。PCを使ったデータの蓄積は1990年代に故野村克也さんが始めたそうで、そこにITの波も加わって一気に分析力が加速したということです。

◎数字だけがデータじゃない!

 ただ、データというと数字が無機質に並んでいるものを連想しがちですが、言語化したものもあるそう。特にプロでは交流戦の対戦相手などは分母が少なく、傾向を数値でははじき出しにくいため、西谷氏も重宝したとのこと。

「データ化は、しやすいモノとしにくいモノがあるので、後者は見た人の主観でもいいから書いておくといいですね。ひとつの情報になりますから」と応じた金沢氏。

 こういった2人のやり取りから、データはひとつの生き物とも感じられました。

◎パフォーマンスを高めるための武器

 プロ時代の話は興味深いですが、実際に少年野球などでやろうとすると難しいところもありそうです。ただ西谷氏は「記録をきちんと取ることと見ることがスタート」と口にしました。

「自分を客観的に見ることが大事なので、できることとできないことをパターン化してほしいですね。それを重ねていくと、答えを導く方程式が見えてきます」と西谷氏。

 また、パターン化に関しては自分のことだけでなく、対戦した投手に対しても言及。たとえとして「直球とカットボールは一緒と考えていいけど、スライダーは外して考える」といった具体例も挙げました。

「情報(データ)化は基本的にパターン化です。あとはそれを割り切れるかどうか。そして自分の能力にあてはめた時に、そういった考えで打てるのか。データを分析していると、パフォーマンスを高めるために情報を区切るという視点も身につきます」と金沢氏も同調。

◎身近なものから始めるデータの活用

 少年野球などにおいては、「先輩のホームラン記録を数えてそれを抜くために努力する」といった目標を立てるためにデータを活用することもできるといいます。

 あくまでもデータはパフォーマンスを上げるためのもの、引き出しを増やすためのもの。まずはスコアブックなどから、なにかしらのデータを取り、自分はどんな選手か? ヒットパターン、凡打パターンを調べてみましょう。

URL :
TRACKBACK URL :
Return Top