熱戦が続く甲子園。球場に鳴り響くのが、「カキーン!」という金属バットの音。もはや夏の風物詩といっても過言ではない、この金属音を生み出す金属バットは、1974(昭和49)年の第56回大会から使用された。
野球規則には「アマチュア野球では各連盟が公認すれば、金属バットの使用を認める」とあり、高野連がこれを認めているので、今では甲子園出場全選手が使用している。今回はこの金属バットについて、様々なうんちくを紹介しよう。
◎最大の理由は経費削減
折れやすい木製バットを使うよりも、経費を節減できる、また減り続ける木材資源の保護にも役立つ、という理由で、高野連が使用を認めた金属バット。最初の 第56回大会では出場した代表34校は全校が試合で使った。しかし、選手全員が金属バットを使うチームもあれば、たった1人しか使わなかったチームもある など、様々だった。
その後は経費節減という理由よりも、バットの根元や先端に当たっても折れるこ とはなく、金属バットのほうが「芯」が広く、手がシビれにくいので思いきりスイングできる、木製バットと比較して飛距離が出る、という理由で使用されるよ うになった。このようなプラス面が大きいことから、現在では当たり前のように全選手が使用している。
◎改良を加えられた金属バット
ちょうど40年前から使用された金属バット。ボールがバットに当たる回数が3000~5000回が寿命といわれているが、なかにはすぐに凹んでしまうものも市場に出回っており、高野連では試合前、必ずバットのチェックを徹底している。
また「カキーン!」という金属音が耳に響き、選手や球審への聴力障害を招いたり、さらにはその音が周辺の住宅地の迷惑になったり、と問題になったこともあった。そのため、1991(平成3)年からは甲高い音が出ない“消音バット”が採用されている。
他にも、飛距離を追求するあまり、ホームランを打つのに都合がよい、ヘッドが重く、ミートの瞬間によくしなる金属バットも考案された。さらに軽いこともあって、この種のバットは折れやすく、その折れ方が極めて危険なため、高野連は製造メーカーに自粛を求めた。
◎金属バットのリサイクル
音の問題も含めて、これまで幾多の改良が加えられてきた金属バット。もう1つの問題が、使用済みバットの処分方法だ。学校によって使う本数は異なるが、現在では年間約10万本の金属バットが製造され、それに見合う分だけ処分されているという。
バットに使うアルミの原料はほとんど輸入に頼り、アルミ管を作るメーカーごとに合金の特殊な成分が異なるので、使用済みバットを溶かして再び金属バットに 利用することはできない。さらに、グリップに巻き付けたテープを剥がし、バットの先端キャップや消音材を取り除く作業もあるため、金属回収業者には敬遠さ れ、不燃物粗大ゴミになるか、土の中に埋められるのが運命であった。
しかし、1990年代頃から 再利用化の声が高まり、メーカー側が協力。そのまま溶解して、製鉄工程の中和剤などに活用されるようになった。「バットを溶かして、またバットを作るのは できないの?」と思われるかもしれないが、金属バットの主な成分のジュラルミンは合成が難しく、単純に溶解しても同じ成分にはならないそうだ。
現在では、車のエンジン部分で使用されるといい、特にハイブリッド車で再利用されることが多いという。もしかしたら、あなたの愛車のエンジンには、甲子園を沸かせた伝説のホームランを生んだバットが眠っているかもしれない。
・2014年8月20日 gooニュース提供記事
※イマジニア株式会社ナックルボールスタジアムが著作権その他の権利を有する記事コンテンツを、gooニュースで配信したものです。