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≪オンラインイベントレポート≫『プロ野球 師弟関係の系譜論』第2回

≪オンラインイベントレポート≫『プロ野球 師弟関係の系譜論』第2回

◎師弟関係を解き明かすオンラインセミナー第2回!

 2021年6月12日、野球太郎本誌、NHK-BS『球辞苑』でもおなじみの野球ライター・キビタキビオ氏によるオンラインセミナーが開催されました。

 第2回となる本セミナーのメインテーマは「プロ野球界の師弟関係」。

 前回は戦後プロ野球界から現代に繋がる「師弟史」の概論をキビタ氏が解説しましたが、今回は現代のプロ野球から系譜をたどり、

「昭和の打撃コーチ御三家」
・荒川博コーチ
・中西太コーチ
・山内一弘コーチ

 に繋がるラインを整理していきました。

◎どうやってもたどり着く中西太コーチの存在感

 師弟関係の系譜を解き明かす上で欠かすことができない存在はやはり中西太コーチです。1962年に西鉄の選手兼監督に就任してから、計8球団で監督・コーチを務め、「名打撃コーチ」としてその名を馳せました。

例)イチロー → 新井宏昌 → 中西太

 仰木彬監督の下、大きく羽ばたき、世界的なレジェンドになったイチロー。オリックス時代に、その打撃を確固たるものに鍛えた一人が新井宏昌コーチです。

 新井コーチは、振り子打法の肝は「前足」「引き手」にあると気づき、前のめりに崩された時でも強い打球を打てるように、引き手である右手をしっかり振る練習を多く提案しました。

 その新井コーチが、現役時代に影響を受けたのが、中西太コーチです。近鉄に移籍するまでは「トップを深く作る」ことを意識しすぎていた当時の新井選手。ですが、中西コーチの「そんなことしなくても自然に打ち出せばいい」との助言で打撃が開花。1987年には首位打者を獲得しました。

 逆に新井コーチから現代に系譜を進めれば、広島時代の丸佳浩も教えを受けた一人です。特に広島で台頭してきた当時の丸の流し打ちは「新井コーチにそっくりだった」とキビタ氏は振り返ります。

 つまり、構えたバットを自然に出すという点では中西コーチから線が繋がるのではないかという“仮説”が立ちます。

◎ティーバッティング用のネットは中西コーチ考案!?

 現代では山田哲人(ヤクルト)が杉村繁コーチの下、さまざまなティーバッティングに取り組み、超一流の打者となったことが知られていますが、ティーバッティングに力を入れ始めたのも中西コーチでした。

 ヤクルトのコーチ時代、肝いりで獲得した若松勉選手を一流に育てるべく、遠征先の旅館で丸めた新聞紙を打たせているうちに、「これをグラウンドでできないか?」と考えた中西コーチ。

 そして発注したのが、いまやどこの野球シーンでも見かけるティーバッティング用のネットだったと中西コーチは著作で語っているそうです。

 キビタ氏の解説によると中西コーチの指導の肝はティーバッティングにあるとのこと。フリーバッティングではあまり細かいことは言わず、ティーバッティングで「トス」の角度を変えて、いいスイングを探っていく。

「選手の個性を生かす」「ティーバッティングを重視する」という点では汎用性の高い中西コーチの指導法は、現代のプロ野球にもリアルタイムで多大な影響を与えているとキビタ氏は分析していました。

◎荒川コーチに繋がる系譜も細々と存在

 キビタ氏が「一子相伝」と表現するのは、荒川博コーチの指導。「世界の王貞治」の一本足打法を作り上げた功績は計り知れません。

「遠回し」と前置きしつつもスピリットの面では、

・荒川博 → 王貞治 → 柳田悠岐

 の系譜も成り立つのではないかと仮説を立てていました。広島経済大時代に龍憲一監督(元広島投手)のフルスイング指令で開花していった柳田悠岐(ソフトバンク)。プロ入り後も王貞治会長からの「会長指令」の形で飛距離重視、フルスイング重視の指導がされたそうです。

 一本足の技術は高度なため、なかなか継承者が現れなかった(※)のも事実ですが、神宮のバッティングセンターで行われていた荒川道場の「最後の門下生」と言われるのが、渡辺勝(中日)です。
※片平晋作さん(元南海、西武ほか)や大豊泰昭さん(元中日ほか)は直接指導を受けたわけではなく、王さんに憧れ、マネをして一本足打法を取り入れた。

 2016年に荒川コーチが逝去されたため、彼が最後の「一本足打法」の継承者。まだ1軍で好成績を収めていませんが、荒川流の系譜が続くかどうかは渡辺勝の今後の活躍にかかっていると、キビタ氏は期待を込めていました。

 その他、山内コーチに繋がる系譜や現代の巡回コーチの役割など、濃厚な「打撃コーチ論」が展開されました。

 第3回はコーチ経験者など「ゲスト」を招いて、もっともっと師弟関係を掘り下げていく予定。ぜひ、次回のご参加をお待ちしております!

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