最終戦で巨人が逆転優勝して幕を閉じた今年の日本生命セ・パ交流戦。その表彰選手が6月27日に発表され、優勝したチームから選出される最優秀選手賞（MVP）には亀井善行が選ばれた。今季、ケガで開幕に間に合わなかっただけに、賞そのもの以上に、チームの勝利に貢献できたことが亀井にとっては何よりも嬉しいだろう。

亀井という選手は、毎年期待され、実際に「ここぞ」という場面で素晴らしい活躍を見せる。しかし、度重なるケガで好調を維持できず、チャンスを生かせないという、ある意味で「呪われた」ようなサイクルを持つ選手だ。もうそんなことがないように、というエールの意味も込め、これまでのケガとの付き合いを振り返ってみたい。

◎レギュラー獲得→ケガ→レギュラー復帰を繰り返した若手時代

2004年のドラフト4巡目で巨人に指名された亀井義行（当時の登録名）。2年目の2006年シーズンには開幕スタメンを勝ち取るが、シーズン中に肋骨を骨折し、レギュラーの座を自ら失ってしまう。今にして思えば、これが亀井とケガの付き合い始めだった。

2009年はシーズン前にWBC日本代表に選出され、イチローのキャッチボールパートナーを務めたことで刺激を受けたのか、右翼手のレギュラーに定着。自身初の（そして今のところ唯一の）規定打席にも達し、打率.290、25本塁打、71打点をマークした。また、日本シリーズでは優秀選手に、オフにはゴールデンググラブ賞を受賞し、年俸も3000万円から6000万円（いずれも推定）と一気に倍増。完全にレギュラーに定着したと誰もが思った。だが翌年、落とし穴が待っていた。

◎ケガとともに守備位置も転々、年俸も乱高下

前年の活躍から、開幕スタメンでスタートした2010年シーズン。ところが、左ヒジ関節の挫傷や腰痛などでシーズン中に3度も2軍落ち。打撃フォームを変えたことが裏目に出るなど、極度のスランプに陥り、右翼手のレギュラーもルーキー・長野久義にあっさりと奪われてしまう。終わってみれば打率.185、5本塁打、17打点という散々の成績で、昨年倍増した年俸も減額制限を上回る30％減の4200万円（推定）で契約更改した。

2011年、2012年はチーム事情から内野と外野を転々。また、2011年には右手薬指の骨折、2012年は4月に死球で鼻骨骨折、7月にも左手親指を捻挫するなど、相変わらずケガの連鎖は止まらなかった。

◎除霊、改名、絵馬……願掛けも祈願も失敗した2013年

度重なるケガに、さすがの本人も「呪われている！」と思ったのか、2012年のシーズンオフには地元・奈良の霊媒師を訪ねて、お祓いを受けたという。そこで霊媒師から指摘されたのが、「左肩に化け物がついている」という恐ろしい呪いの要因だった。

実際、体の左半身を痛めることが多かった亀井は、この「除霊」だけではなく、キャンプ前に名前を「義行」から「善行」に改名し、キャンプイン前日には絵馬に「健康」と書き込むなど、さまざまな願掛け・厄払いをしてキャンプに臨んだ。ところが、その甲斐もなく、キャンプ2日目に左ふくらはぎ肉離れでリタイアすることに。呪いは払拭できなかった。

もっとも、シーズン途中でレギュラーに復帰すると、球団通算5500勝目を自らの逆転サヨナラ打で決めるなど、あらためて勝負強さを示した。また、日本シリーズではファインプレーで最も大会を沸かせた選手として表彰される「ベースボールヒーローズ賞」を受賞。なんとか一矢報いる形でシーズンを終えたのがなんとも亀井らしい。

◎レジェンドの指導で今度こそ復活なるか!?

そして今季。キャンプでは松井秀喜臨時コーチから直接指導を受けるなど、充実のキャンプ生活を送っていた亀井。ところが、キャンプ終了直前の2月26日に右手人さし指を骨折。今季もまた、ケガに悩まされるシーズンインとなった。

その後、2軍で調整を続けた亀井は交流戦中の5月31日に1軍復帰。そのため、規定打席に届かなかったものの、交流戦期間中に打率.356、3本塁打、10打点をマークして「完全復活」を印象づけた。特に印象的だったのが、亀井が復帰してからの交流戦11勝のうち、試合を決める殊勲打が4度もあった。このことが決め手となって、冒頭でもふれた「交流戦MVP」に選出されたのだ。

これまで何度もケガを乗り越え、チームに貢献してきた亀井。それが長続きしないという課題を今度こそクリアすることができるのか。今季、このまま亀井の好調が維持できれば、巨人の優勝への道は更に盤石なものになるのではないだろうか。