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楽天「戦略コーチ」に就任した行木茂満ってどんな人? そもそもスコアラーって?

楽天「戦略コーチ」に就任した行木茂満ってどんな人? そもそもスコアラーって?
 星野仙一監督の病気療養に伴い、監督代行に就任した佐藤義則投手コーチ。その佐藤監督代行を補佐する目的で、楽天は5月27日に新コーチ就任を発表した。行木茂満スコアラーが「戦略コーチ」を兼任することになったのだ。
  戦略コーチは近年、各チームで重要性を増しているポジションだ。そんな中、この人事が画期的なのは、行木コーチにプロ野球選手としての経験がないというこ とだろう。そんな特異な経歴の行木氏とはいったいどんな人物なのか? 『野球太郎』編集部では、今春に上梓した『プロ野球のスゴイ話』(ポプラ社)の中で 行木コーチにインタビューをしている。その内容とともに、これまでの行木氏の足跡を振り返ってみたい。
◎高校球児からデータ分析のプロフェッショナルへ
 行木茂満氏は東京の関東一高出身。野球部に所属し、守ってはショートを、またチームの副キャプテンを務めるなど活躍した。
  高校卒業後、「アソボウズ」(後の「データスタジアムl。様々なスポーツ競技のデータを収集して分析する会社)に入社。野球担当になった行木氏は、もっと 深くデータを活用してもらおうと、実際にプロ野球チームの中に入って作業をすることもあったという。また、日本のチームだけでなく、メジャーリーグの ニューヨーク・メッツでもデータ分析を担当するなど、業界内ではその知識・経験ともに有名な存在だった。
 2005(平成17)年からは誕生したばかりの楽天を担当。データを通じてスコアラーやコーチ、選手とも密なコミュニケーションを重ねた結果、チームから請われる形で、2008(平成20)年より楽天のチーム付きスコアラーに就任した。
「他のスコアラーと違って、僕にはプロ野球経験がないので、初めはなかなか、選手から信用されていないところもあったと思います。自分はこの投手のこのボール を狙って打ったことがある、という話はできませんから。そこで、データそのものをなるべく簡単に、わかりやすく選手に伝えるように努力しました」(『プロ 野球のスゴイ話』より、行木氏インタビュー)
 「バッテリー担当」と「打者担当」に役割が分かれる チーム付きスコアラーにおいて、行木氏は「打者担当」を務めた。その仕事は、楽天の野手全員の打撃特徴(長所と短所、コースや球種の得意不得意)の分析か ら始まり、さらには相手投手との対戦成績も調べなければならない。つまり、相手投手の特徴もすべて把握する必要がある、ということだ。この経験値こそ、今回「戦略コーチ」として抜擢された所以といえるだろう。
◎僕らチームスタッフは、試合に勝つことがすべて
 スコアラー時代の行木氏のタイムテーブルも見ていこう。
 試合が午後6時から始まるホームゲームの場合、行木氏は午前11時に球場入り。その日の相手先発投手の対策を打撃コーチに説明し、午後4時半から行われるミーティング用の映像制作にとりかかる。
  映像の活用はデータスタジアム時代からお手の物だった行木氏。チームの士気があがり、いいイメージを持って試合に入れるよう、楽天の打者陣が相手投手から 打っているシーンばかりを選んで編集し、ミーティングに臨んでいた。また、ミーティングとは別に、その日の先発投手のデータと、選手個々の過去の対戦成績 がひと目でわかる資料を制作、配布もしていたという。
 試合中はベンチから相手投手を見て、一球ごとに球種をチェック。打者が一巡したあたりで試合前のミーティングで話した内容と違いがないかを分析し、その後のゲームプランについて打撃コーチと相談することも。
 試合終了後は、次に同じ投手と対戦するときに活かせるよう、試合中に書き記した球種などを整理。試合時間が長引いた日であっても、そのデータ整理が終了するまで、行木氏の仕事は終わらない。
 この一連の流れを見るだけで、行木氏のチーム内におけるプレゼンスの高さを理解することができるのではないだろうか。
 『プロ野球のスゴイ話』の中で、行木氏は2014(平成26)年シーズンに向けての抱負も語っている。
「チームが勝てなくても、自分の成績がよかったら、選手は前向きな気持ちになれると思います。でも、僕らチームスタッフは、試合に勝つことがすべてです。そのた めにこれからも、選手にわかりやすくデータが伝えられるよう、頑張ります!」(『プロ野球のスゴイ話』より、行木氏インタビュー)
 「チーム付きスコアラー」から「戦略コーチ」へと肩書きが変わった行木氏。その肩にかかる重責はさらに重たいものになったはず。『野球太郎』では今後ともその動向を追いかけていきたい。
・2014年6月6日 gooニュース提供記事
http://news.goo.ne.jp/article/yakyutaro/sports/yakyutaro-20140606162944394.html
※イマジニア株式会社が著作権その他の権利を有する記事コンテンツを、gooニュースで配信したものです。
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