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弱くてもルーズヴェルト・ゲームはできます!? 最終回目前、注目の野球ドラマのみどころをチェック!

弱くてもルーズヴェルト・ゲームはできます!? 最終回目前、注目の野球ドラマのみどころをチェック!
4月~6月期のドラマもいよいよクライマックス! 今期は日本テレビ系で『弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』、TBS系で『ルーズヴェルト・ゲーム』という2本の野球ドラマが描かれ、話題を呼んだ。前者が高校野球を、後者が社会人野球をテーマにしているという点以外にもさまざまな相違点があった。今週末の最終回を前に、今一度おさらいしておこう。
◎前代未聞の実験ドラマ『弱くても勝てます』
 超進学校の超弱小野球部を舞台に、「異常な野球」で強豪校に挑むドラマ、それが日本テレビ系『弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』(土曜・21時~)だ。
 劇中では主人公である野球部監督・田茂青志が何度も「実験、実験だ!」と叫ぶ。グラウンドが週1日しか使えず、練習時間が少ないからこそ、ありきたりな練習ではなく、生徒自らが仮説を立て、実験と検証を繰り返すことで「自分だけの武器」を身につけていく。同様にこのドラマにおいても、さまざまな「実験的工夫」が随所に込められているのが特徴だ。
<実験1/原作がノンフィクション>
 原作はノンフィクション作家、髙橋秀実が2012年に上梓した『「弱くても勝てます」:開成高校野球部のセオリー』。超進学校として有名な開成高校の“弱小”野球部が、他校とは違うアプローチで野球に取り組む様子を追いかけたスポーツ・ノンフィクションだ。
 過去をさかのぼれば、ノンフィクションをベースにドラマ化された物語も当然存在する。だが、この『弱くても勝てます』がより実験的なのは、開成高校野球部はまだ何かを成し遂げたわけではないということ。ゴール(結果)が主ではなく、そこに至るプロセスや野球への取り組み方そのものがテーマであり、みどころのひとつだ。
<実験2/甲子園は目指さない>
 高校野球を題材にしているものの、本作における球児たちの目標は「甲子園出場」ではない。目指すのは強豪校撃破。非現実的な夢を追いかけるのではなく、目の前の目標をひとつずつクリアしていくことが大事なのだ。
 結果として、「高校野球=汗と涙の甲子園」というステレオタイプの呪縛から逃れることに成功できているのは、ある意味でドラマとしての強みともいえるだろう。
<実験3:ヒーローキャラがいない>
 本作の主人公は野球部監督を務める田茂青志(二宮和也)。この青志が実に主人公らしくない。決して熱血教師ではなく、しかもどちらかといえば根暗。生徒たちにもいつも文句ばかり言っている。
 本作を群像劇と捉えれば野球部の面々も主人公といえる。だが、彼らにしても「弱い」がゆえに自信もなく、そして当然プレーもカッコ良くない。じゃあ、負け組男子が成長していく物語か? といえばそう単純でもない。なぜなら彼らは超進学校の生徒たち。野球は下手でも勉強では圧倒的に勝ち組。それゆえ、野球に対しての必死さや悲壮感がどうしても弱い。
 そんなキャラクターたちが物語を通じてどう変わっていくか(変わらないのか)をチェックするのも本作の楽しみ方のひとつ。最終回で野球部の面々はどんな顔を見せ、どんな言葉を発するのかに大いに注目したい。
◎骨太本格野球ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』
 アメリカ第32代大統領、フランクリン・ルーズヴェルトが「野球で一番おもしろいスコアは8対7だ」と語ったという逸話に端を発するTBS系ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』(日曜・21時~)。経営危機に直面する中堅精密機器メーカー「青島製作所」を舞台に、倒産寸前に追い込まれた会社と、廃部寸前に追い込まれた野球部が、奇跡の逆転劇「ルーズヴェルト・ゲーム」を起こすために奮闘する、逆転につぐ逆転の物語だ。野球部を救う天才投手役を、西武・巨人などで活躍した工藤公康氏の長男で俳優の工藤阿須加が演じていることで話題を集めている。
 『弱くても勝てます』が実験的な工夫で勝負に挑んでいるのに対して、『ルーズヴェルト・ゲーム』は実に直球勝負。骨太な人間ドラマと本格的な野球描写が何よりも魅力的な点といえる。
<本格1/侍ジャパン、小久保監督直々の技術指導>
 『ルーズヴェルト・ゲーム』では技術指導の一部を「侍ジャパン」が担当。小久保裕紀監督自らキャッチボールの大切さを役者陣にレクチャーしている。
「キャッチボール1つでも意識することで変わることがある。自分のために捕るのではなく、仲間のために捕ろうと意識することで、どんどんいい方向にいく。野球だけではなく、役者さんとしても同じことが言えるんじゃないかな」(『ルーズヴェルト・ゲーム』番組ウェブサイトより、小久保監督からのメッセージ)
 この他、「侍ジャパン」テクニカルディレクターである鹿取義隆氏が本人役で登場するなど、球界全面バップアップのもと制作されている点に、このドラマの「本気度」が見て取れるはずだ。
<本格2/散りばめられた「野球ネタ」を探せ!>
 劇中では青島製作所野球部と巨人の2軍との練習試合が組まれたり、社長秘書が長野久義の大ファンだったり、交渉先の社長室にジャビット人形が飾ってあったりと、野球ファンであれば思わず反応したくなる小ネタも充実している。
 また原作以上に「野球用語」がセリフの随所に散りばめられているのも見逃せない。中でも、ネットを中心に話題となったのが香川照之演じる諸田社長のセリフ、「180度……いや、540度ち・が・い・ま・すっ!」だ。このセリフは、2012年7月、ヤンキースに移籍した直後のイチローが発した言葉「180度……いや、540度違う」がネタ元になっている。最終回の予告編ではまたしても香川照之が登場し、「900度……」とつぶやくシーンもある。イチローの名言をどうアレンジしてくるか要チェックだ。
<本格3/社会人野球も全面的にバックアップ>
 前述した鹿取氏以外でも、本作では実在のチーム名や野球選手の実名がさまざまな場面で登場する。これらはすべてドラマ版オリジナルのエピソードであり、特に社会人野球に関するトピックスが実に多い。その象徴的な例が社会人野球の名門・日本生命野球部だ。巨人のドラフト1位・小林誠司が日本生命出身だったこともあって「小林ネタ」が野球好きの相手社長との交渉に一役買う、といった原作にはないシーンが生まれている。
 最終回では、都市対抗野球進出をかけた敗者復活戦が描かれる。レベルの高いCGも駆使した野球描写は、試合展開の妙と相まって、野球ファンも満足できるものになっているはずだ。
(文=オグマナオト)
・2014年6月21日(土)gooニュース提供記事
※イマジニア株式会社が著作権その他の権利を有する記事コンテンツを、gooニュースで配信したものです。
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